기사2021년 0610

原作者のセリフですらボツになる!? ファンを虜にし続ける“ゆゆ式らしさ”の秘密

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TVアニメから約4年、2017年2月22日に発売された待望のOVAをきっかけとした『ゆゆ式』連続インタビュー企画。初回にはアニメ『ゆゆ式』を作り出したかおり監督に新作OVAについて、つづいて『ゆゆ式』愛の伝道師・小倉充俊プロデューサーにアニメ化の歩みについての取材を試みた。

となれば――最後には『ゆゆ式』の生みの親から話をうかがわないわけにはいかないだろう。最終回となる今回は、『ゆゆ式』原作者・三上小又氏のインタビューをお送りする。

先のかおり監督の取材では、『ゆゆ式』に対する熱烈な愛情とともに、ことあるごとに、独特極まる“『ゆゆ式』らしさ”をアニメに落とし込むことのむずかしさが強調されていた。

それはBlu-ray BOXのブックレットに収録された「少しでも語尾や間をいじっただけで、『ゆゆ式』の独特の空気感やキャラクターみたいなものが崩れてしまったんです」(高橋ナツコ・シリーズ構成を担当)という証言をはじめ、数々のインタビューで繰り返し語られてきたことだ。

ファンを虜にしつづける、唯一無二の“『ゆゆ式』らしさ”。

スタッフやファンのあいだに満ち満ちた“『ゆゆ式』愛”の理由の一つはきっとそこにあるのだろうし、あるいは小倉プロデューサーのインタビューで『ゆゆ式』の魅力として語られた“じわじわ感”という言葉も、この謎めいた“『ゆゆ式』らしさ”を何とか言い当てようとして生まれた形容の一つと言えるかもしれない。

では、このいまだ言葉にならない“『ゆゆ式』らしさ”とはいったい何なのか。そのヒントを探るべく、『ゆゆ式』インタビューシリーズの締めくくりとして、三上氏にTVシリーズからOVA、そして原作マンガとその今後の展開まで、『ゆゆ式』のすべてをじっくりと語ってもらった。

このスタッフなら『ゆゆ式』を任せられる

『ゆゆ式』OVA「困らせたり、困らされたり」が大きな人気を博しました。3月末の「AnimeJapan2017」時には、りんかい線は国際展示場駅構内に「ゆゆ式OVA大ヒットありがとう!」という巨大パネルまで貼り出されていて。

三上小又氏(以下、三上氏): すごく多くの方に応援いただけたようで、本当にありがたいですね。僕自身ももう何度も見返しています。OVAの制作時には事前にいくつか資料を拝見していたんですけど、原作の絵柄の変化に合わせて、デザインや仕草、背景の描き方といろんな面で最近の僕のテイストに寄せていただいていて、完成版で最初にそれがそのまま動いているのを観たときは感激でした。

この機会にあらためて、TVアニメ化企画のスタートからうかがえればと思うのですが、メインスタッフの方々とはじめに顔合わせされたときはいかがでした?

三上氏: 最初の打ち合わせは荻窪のキネマシトラスさんでやったんですが、かおり監督と、小倉充俊プロデューサー、シリーズ構成の高橋ナツコさん、TVシリーズのキャラクターデザイン・総作画監督だった田畑壽之さん、キネマシトラスの小笠原宗紀プロデューサーがいらっしゃいました。そのときまでは原作は原作、アニメはアニメだと思っていたので、多少僕のイメージと違うものになっても自由に作っていただければというつもりでいたんですけど、お話していくうちに、はじめに僕が思っていた以上に「このスタッフだったら、この子たちをちゃんと扱ってくれそうだな」「お任せしてもちゃんと僕のイメージする『ゆゆ式』になるな」という感触があったんですよ。

その際の打ち合わせの内容というのは?

三上氏: すでにスタッフさんたちのあいだでは何度も打ち合わせを重ねられたあとだったようで、日常に流れる時間や、この子たちの関係性の積み重ねを大事にしたいという小倉プロデューサーのプレゼン資料もあったりと、作品のイメージを明確に固められていて。なのでそこでは、「原作のここがどうしてもつかめない」というところについてご質問いただき、それに僕が答えるというものでした。

でも受け答えしていくなかで、僕が「そのエピソードはどこでしたっけ?」と言うとすぐに、小倉プロデューサーや高橋ナツコさんから「何巻の何ページです」と返ってくるくらい、ものすごくしっかりと原作を読み込んでいただけていて(笑)。

(笑)。その際に三上先生のほうから具体的に伝えられたことはあったのでしょうか。

三上氏: すでにいろんなインタビューでかおり監督や小倉プロデューサーに語っていただいてきたことですが、「この子たちは芸人ではないのでお客さんのウケを取りにはいきません」というのはお伝えしましたね。この子たちはお互いを楽しませようとしているんだというのは、僕もすごく大事にしているところなので。

かおり監督とはいかがでした?

三上氏: 印象に残っているのは第1話に関していただいたご提案です。これは最初の打ち合わせとは別の日のことなんですけど、監督からアニメの第1話では、原作第1巻にある、唯がゆずこと縁に対して「コイツらカワイぎるだろっ!」とモノローグするシーンをやらせてほしいというご相談を受けまして。

原作第1巻の第1話目に収録されている、連載開始前の読み切り時のエピソードですね。

三上氏: はい。ただあのセリフは、もう2巻・3巻以降の唯なら絶対に言わない言葉だと思うので、はじめはなんでなんだろうと思ったんですけど、かおり監督は「唯はここでしかほかの2人のことをかわいい、好きだって明言してないんです。なので、そこは3人の関係性がまだつかめていない視聴者の方へ向けて、第1話ではっきりと示しておきたいと思うんです」と。それで「なるほど」と腑に落ちて、「わかりました、アリでお願いします」とお返事しました。

少しの変化でも違和感を覚えさせてしまう独特のセリフ回し

新作OVAの制作にあたっても、キャラ表、シナリオ、絵コンテなどをチェックされていたとのことですが、そちらに関して三上先生の側から何か修正依頼を出された点は?

三上氏: 本当に細かいところだけですね。キャラクター表では「唯の横髪はゆずこよりちょっと長くお願いします」とか「おかーさんの髪の束ね感をもうちょっとゆるくしてください」とか。シナリオも、完成版とほとんど変わらないすごく練られた段階のものが届いたので、僕のほうからは語尾のニュアンスなどについて少しコメントしたくらいですね。

語尾が少し変わっているだけでもわかりますか?

三上氏: わかりますね。

担当編集: 『ゆゆ式』の会話の場合、ほんの少し変えただけでも違和感を覚えてしまうんですね。原作の打ち合わせの際にも、三上先生はよく「気持ち悪い」という表現を使われていて。何かがハマってないときに「この会話、なんか気持ち悪いですね」と。

三上氏: あー、言ってますね(笑)。ネタ出しのときに「いいセリフが思いついた」と思っても、全体の流れのなかに置いてみると「なんか気持ち悪いなー」とボツにすることもよくあります。

担当編集: 三上先生ご本人の考えたセリフでもそうなるくらいなので(笑)、語尾が少し違うだけですぐわかってしまうんです。

つづく絵コンテのチェックはいかがでした?

三上氏: そこはもう楽しく読むだけですね。TVシリーズのときからそうですけど、かおり監督の絵コンテは絵がていねいで、イメージがつかみやすく描いてありますし、見るだけでこの子たちが楽しそうにしてるのが伝わってくるんですよ。なので僕からは「ここが良かったです!」「動くのが楽しみです!」みたいなコメントしかないです(笑)。

実際の完成映像を観て、特に印象に残ってるシーンはありますか?

三上氏: どれもいいシーンばかりで一つには絞れないのですが……昨日観返していたときは、ゆずこが唯にお昼ごはん買ってきてもらうシーン。あそこで唯が選んだものを見てゆずこが「天才」って言うところは、ゆずこの変顔も大久保瑠美さんの言い方もあって、もう何度も何度も観返しているはずなのにまた笑っちゃいましたね(笑)。

“かわいい”ではない、キャストへの演技指導

『ゆゆ式』はキャストさんの演技も非常にマッチしていると思いますが、OVAの際もアフレコ現場へは立ち会われていたのでしょうか?

三上氏: はい。収録現場は本当に楽しいです(笑)。

どういったところが?

三上氏: 音響監督さんやかおり監督の出す指示もおもしろいですし、それに対してのキャストさんの返しもまたおもしろくて。ドラマCDのボーナストラックとして「収録現場」の録音を入れてほしいくらいです(笑)。

担当編集: 久々の収録だったので、音響監督の明田川(仁)さんもディレクションされながら「あ、そうだった。この作品は、かわいいじゃなかったな」とおっしゃってましたね(笑)。

三上氏: 「もっとかわいくなく」「もっとおっさん臭く」みたいなディレクションが飛び交ってて(笑)。

担当編集: 録音ブース内の声がこちらまで届かなくても、キャストさんたちの様子から「たぶんいまあの話をしてるんだろうな」という感じが伝わってきましたよね。

三上氏: そうなんですよ。さっきのような変なディレクションがあったりすると、それに対してキャストさんたちが「えー!?」みたいに言ってるのがわかる(笑)。

三上先生からは演技に対してもオーダーを出されることはあるのでしょうか。

三上氏: TVシリーズのときはシーンの意図やセリフのニュアンスについて質問をいただくことも多かったですけど、OVAではもうみなさんばっちりというか、むしろ僕の想像以上にいい演技をしてくださって。そもそもTVアニメになってからは、原作を描いてるときもセリフがキャストさんたちの声で再生されるようになったくらいですし、今回もたとえば、ゆずこが虫をつかまえるところのやり取りなんかはこんな風になるとは思わなくて、すごくびっくりしました(笑)。

わざとかわいくなり過ぎないように描く

またこの機会に、マンガ『ゆゆ式』についてもうかがわせてください。現在はどのような手順で作られているのでしょうか。

三上氏: まずはネタ出しからですけど、『ゆゆ式』では会話の流れが重要になるので、1ページ目の頭から順々に考えていきながら、ときどき普段から書き留めてあるネタ帳を見てアイディアを足していってます。(サンプルを描きながら)こういう風に1枚の紙に、この子たちの会話を文字と記号で書いていくんですけど、アイディアは湯船に浸かっているときに思い浮かびやすいので、ネタ出しの紙をiPhoneで写真に撮ってお風呂のなかまで持っていって、その画像を見ながら思いついたことをメモするなんてことも多いですね。

いま描かれたサンプルを拝見するに、ネタ出しのフォーマットが独特だと思うのですが、こちらを公表されたりしたことやされる予定というのは?

三上氏: ないですね。あくまで未完成品なので、その後のネームまで含めて全部処分してしまっています。残してあるのは下書き以降だけですね。下書きまではアナログで、それをスキャンして、ペン入れ以降はデジタルで。

その際のアプリケーションは?

三上氏: 線画はComicStudioで、色塗りはSAIです。ペンタブレットは板型のIntuosで、一昨年ぐらいにサイズを大きくしました。液タブも一回使ってみたんですけど、慣れるのに時間かかりそうだなと思ってIntousのままですね。

時期によって絵柄が変化されているというお話もありましたが、ツールの変化なども関係しているのかなと思ったのですが。

三上氏: カラーの描き方は、ツールの新しい使い方を覚えたりして変わったところがありますね。ただ本編のモノクロの絵に関しては、僕自身の意識の変化が大きいと思います。というのも、連載当初はいわゆる萌え4コマっぽくしようという意識があったんですけど、それがどんどん抜けていったんですよ。むしろ一時期は、マンガチックにならないように、サービスも入れないように、かわいくなり過ぎないように、と思うようになっていて(笑)。5巻・6巻のころに一番極まってたんですけど、流石に少しやりすぎたかなと思って、7巻・8巻のころからはかわいいほうにも戻すようになりましたけど。

“かわいくなり過ぎないように”というのはどういった理由から?

三上氏: 感覚的なものなんですけど、いわゆる“かわいらしさ”を描きたいのではなく、“この子たちらしさ”のようなものを大事にすれば、それだけでかわいく、おもしろくなると思っていて。

イベントを描かないというのもそういうことなんです。たとえば文化祭でこの子たちがおもしろくなるっていうシーンを描くとすると、その文化祭という楽しいイベント自体のおもしろさを描く必要がありますよね。周りでこんなことが起こってますよと。でもそうなると、その分この子たちが自分で発するおもしろいことが減ってしまうじゃないですか。それがもったいないなと思うんですよ(笑)。

なるほど。それに対して「海水浴」や、その後の「映画」や「迷子」などのイベントは……この子たちが主体的に動けるから問題ないということですか?

三上氏: そうなんです。海水浴であれば「はい、海に着きました」というのを描けば、あとはこの子たちがおもしろいことをやるだけなので。

アニメ・マンガ『ゆゆ式』のこれから

原作『ゆゆ式』の今後についてもうかがわせてください。現状では2年生を、単なるループではない独特の形式で繰り返していますが、今後3年生に進級させるという展開もありうるのでしょうか?

三上氏: 3年生になるとどうしても受験の話題が出てきてしまうと思うので、いまのところあまり乗り気ではないですね。受験ネタをうまくかわしながら描くこともできるとは思いますけど、それなら2年生のままのほうがいいかなと。

ただ原作のなかには、3年生への進級を予感させるような話題もよく出てきますよね。

三上氏: それは2年生であれば、3年生になる話が出てくるのが自然だと思うからですね。春が近づけば次の年度の話が増えるし、将来の話もするだろうと。だから特に進級への伏線というつもりはなくて、2年生のまま、いまと変わらない『ゆゆ式』をまだまだ描いていくつもりです。

それですとアニメの続編へ向けたストックも心配なさそうですね(笑)。では最後に『ゆゆ式』のアニメ・マンガのファンへ向けてメッセージをいただけるでしょうか。

三上氏: アニメに関しては、個人的にもぜひ続編が観てみたいですね。TVシリーズが夏で終わっているので、秋と冬のエピソードはまだたくさん残ってますし、いまも新作を描くたびに、これもアニメ化してほしいなと思うことがよくあります。TVシリーズはもちろん、またOVAというかたちででも作ってもらえたらうれしいですね。特にアニメは、小倉プロデューサーやかおり監督、高橋ナツコさんたちがいれば安心ですから(笑)、僕自身、純粋に楽しませてもらう側でいられます。

マンガに関しても、アニメがちゃんと“ゆゆ式丸出し”で作ってもらえているので、その延長線上でどこからでも読んでもらえるんじゃないかと思います。僕もまだまだ描きつづけるつもりなので、読者のみなさんにも、この子たちとずっと一緒に笑ってもらえればうれしいですね。

ついに3回目を迎えたアニメ『ゆゆ式』インタビュー、いかがだっただろうか。

この一連のインタビューでは、Twitterでのエア実況――2017年6月現在、火曜深夜の『ゆゆ式』エア実況は17クール目に突入し、そのうえOVAの発売を受けて再びツイート数を延ばしている――がいまだにつづくようなファンの熱狂の理由を紐解くことが一つの軸となってきたが、そのなかでキーワードとして浮かび上がってきたのが、製・制作陣に溢れる“『ゆゆ式』愛”と、原作者の三上氏がこだわり、アニメでも作品への愛情ゆえに大切に大切に描かれた“『ゆゆ式』らしさ”だったように思う。

一般に萌え四コマというと、かわいらしい女の子キャラの日常を描いたかわいらしい作品を思い浮かべるかもしれない。もちろん野々原ゆずこ、櫟井唯(ゆい)、日向縁(ゆかり)たち「ゆ」からはじまる女子高生3人の、「ノーイベント・グッドライフ」な何気ない日常を描き出すマンガ『ゆゆ式』も、広くはそうした作品の一つと言うことはできる。

しかし今回、三上氏の話を聞くなかから見えてきたのは、『ゆゆ式』においてはいわゆるかわいらしさではなく――わざと“かわいくなり過ぎないように”描いていたという発言!――、“この子たちらしさ”が大事であり、それが“『ゆゆ式』らしさ”の一端へとつながっているということだろう。

かおり監督はインタビュー内で「三上先生の話の作り方って、誰かを傷つけたり貶したりするネタは絶対入れないじゃないですか」と語っていたが、それもきっと『ゆゆ式』が「ギャグもの」ではなく(「この子たちは芸人ではない」)、はたまた特別でかわいいキャラクターたちの物語でもなく(「いわゆる“かわいらしさ”を描きたいのではなく」)、「この子たち」(小倉氏が言うところの「たまたま仲良くなって一緒にいるのではなく、一緒にいるために努力している3人」)が楽しい作品だからなのではないだろうか。

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